会社概要Hino Architectural Design

代表者の経歴についてCompany

子供の頃から大学生の頃までにあったいくつかの出来事が、構造と温熱を重要視し、欠陥住宅が嫌いで、現場感覚があるという今の自分の特徴を作っているように思いますので、その時期のことを書きたいと思います。

セルフビルドの経験が、後に役立つとは・・・

徳島県鳴門市生まれで、大学受験の浪人生をしていた19歳まではずっと鳴門市在住で、父親・祖父の影響でDIYで色々なものを造っていました。最終的には、4坪ぐらいの小住宅をセルフビルドで建築いたしました。この時は基本的に一人でやるので、棟上げがやり易いだろうと考え、ツーバオフォー工法を応用して建築しました。建築系の大学生だったので、知識もある程度ありましたが、大学で学ぶ知識と住宅の実務はかなり違うので、特に温熱に関しては素人同然だったように思います。
どんな断熱材をどのくらい入れれば良いのか?隙間風を減らしたいが蒸れないためには通気層を設けなければならないが、それぞれがケンカしてしまう…。などと、悩んでいました。
結局は考え及ばず、かなり矛盾のある構成になってしまった部分もあり、後悔が残っています。
この悩みは、後に高性能住宅を生業とするようになって解決するわけですが、素人が陥りやすい間違いを身をもって体験したことは良い経験になっています。
また、曲がりなりにも2軒の建物を自分の手で建てたことで、大工仕事をしたことが無い設計者とは違い、ある程度共通の現場意識を持って職人さんと話をすることが出来ます。

実家は、欠陥住宅の見本市。地元の工務店のピンとキリを知る

また父親は歯科医院をしており、鉄骨造3階建ての1階が歯科医院、2階・3階が居宅でした。そして、この実家が欠陥住宅の見本市のようなことになっており、多種多様な欠陥がありました。
地元の工務店で建築したのですが、これが「地元の工務店」の悪い例の典型のようなもので、出来上がった建物は欠陥住宅の見本市のようなものでした。後で聞くと、鉄骨造の建物は建てたことが無かったらしいく、「質の悪い工務店+初めての工法」という最悪のコンビネーションだったのだと思います。
祖父は「あいつに鉄骨を経験させてやりたかったんじゃ」と言っていたそうですが…。
親が欠陥住宅に散々苦労させられるのを目の当たりにしており自分も被害を被っていましたので、業者側となった今、なんとしても欠陥住宅にならないようにしなければ、という思いは人一倍あるように思います。

その後、築20年を超えたことと様々な問題に悩まされ続けていたことにより、私が大学生の頃に大規模リフォームをすることになりました。私は建築系の学生でしたので、設計を私が担当することになりました。
施工は、建築時とは別の工務店にお願いしたのですが、この工務店は優秀な会社でした。
数々の不具合を、様々な技術を駆使して解決していき、ほとんどすべての欠陥を解決してくれました。
この時は「良い工務店」の典型的な例を見たように思います。工事中も頻繁に現場を確認しに行って、工務店の社長さん・社員さん・現場の職人さんと色々話をしたり納まりを確認したりしたのですが、学校では習わない現場での微妙な判断なども含めて、非常に勉強になりました。
設計者・現場監督としてのあり方に、かなりの影響を与えられたと思っています。

主な欠陥について、下の表にまとめます。

実家に起こった欠陥 -No.1-

欠陥
小さな台風が通過した次の朝、1階歯科医院の床が一面水浸しになるほどの雨漏り
原因
バルコニーの防水の不良(立上り不足)
解決方法
掃き出し窓の設置高さを高くして、窓下の立上りを高くしての 防水工事を再施工して解決。

実家に起こった欠陥 -No.2-

欠陥
3階床が部分的に歩くとブヨブヨとたわむ
原因
手抜き工事により、スパンが広い部分の梁が、スパンが狭い部分の梁より小さくなっていた。
解決方法
柱を追加し、十分な強度があると思われる2階床梁に荷重を流して対応。

実家に起こった欠陥 -No.3-

欠陥
阪神淡路大震災時、外壁タイルの剥落多数
原因
鳴門は震度5強とかなり強い揺れだったが、手抜き工事により梁せいが異常に小さい部分が多数あり、構造体強度不足による、過大な揺れが直接原因
解決方法
ラーメン構造だった構造体を、外壁面を構造補強して対応。

実家に起こった欠陥 -No.4-

欠陥
3階の雨漏りが止まらない
原因
屋上は陸屋根で四方に低いパラペットがあるが、肝心のシート防水が手抜き工事で、1/3は防水シートが未施工で、保護の塗装のみだった。
解決方法
元の屋根の上に切妻屋根を増設し、水仕舞いを完全にした。

実家に起こった欠陥 -No.5-

欠陥
断熱性能と気密性能は無いに等しい。
原因
壁の中のグラスウールが内部結露と雨漏りで軒並み垂れ下がっていた。 屋根と床下は元々断熱材が入ってなかった。 気密は考慮されていないので、もともと隙間風だらけ。外壁の一部は小波スレート板縦貼りで、防水紙無しと、時代を考えても仕様がひどい…。
解決方法
外壁はタイベック+通気胴縁+窯業系サイディング、グラスウール充填、内壁はベニヤ板9㎜+ビビニールクロスと、面白みはないけれど、まともになった。

実家に起こった欠陥 -No.6-

欠陥
台風の度にサッシのまわりから浸水する場所がある。
原因
サッシの取付部周辺の水仕舞が出来ていない。まあ、元々防水紙が無い部分も多かったですが…。
解決方法
骨まで戻して外壁も全てやり直して、間取りも窓の位置もすべて変わったので、まともな取付方法になって解決。

このように、家全体を骨まで戻して、何もかもやり直したので解決出来ましたが、建築時を上回る費用がかかりました。このように、悪質な手抜き+知識・技術不足と地元の工務店の悪い面が余すところなく出るとこうなるという見本のようなものです。もちろん、その他にも中小の不具合、手抜き工事は多数あるのですが、ここでは省略いたします。
この時の工務店は、オーダー家具製作対応が得意な会社で、私の細かい設計にも、様々なオーダー家具で対応してもらい、オーダー家具の魅力・利点を十分に見させてもらいました。

現在の私もオーダー家具を得意技の一つとしているので、やはりこの時の影響なのかもしれません。

高性能住宅の設計者としてみると、断熱工事に関しては気密層・防湿層が考えられておらず不十分だと思いますし、アルミサッシ+単板ガラスでしたが、2000年代初頭ですので仕方ないところかなと思います。リフォーム前はどんなに暖房しても器具の周辺にしか効かなかったのですが、リフォーム後は一応エアコンも効くようになっていましたし、窓が結露するようになったので、冷暖房が効くようになっていたのだと思います。仕様的にはQ値=4~5くらいだったと思いますが、鉄骨の熱橋があるのでおそらくQ値=5~7ぐらいだったのではないかと思います。リフォーム後に寝室の窓があまりに結露するので、寝室の窓だけペアガラス交換したのですが、枠がアルミのままなので、枠の結露が解決できませんでした。今であれば、樹脂サッシの内窓を入れれば解決しますが…。

今思うともったいない大学生活でも、基礎は身に付いていたようで・・・

話は時をさかのぼりますが、大学受験の進路選びでは、漠然とですが建築学科を選び、1年間の浪人生活の後、神戸大学工学部建設学科建築学コースに合格しました。

在学中はあまり熱心な学生では無かったのですが、一流の研究者とそれ相応の研究設備に囲まれていたので、それなりに多くの事を吸収していたようです。
そして鉄骨造の研究室に在籍し、柱梁接合部の溶接の品質管理の研究に携わりました。

この研究室は、阪神淡路大震災で中小規模の鉄骨造のビルが多数倒壊したことに対する改良方法を研究していました。
粗悪な現場溶接で柱と梁が接合されていたので、設計上予定していた強度以前に柱と梁がちぎれてしまい、接合部の崩壊という最悪の事態が倒壊という最悪の事態になったわけですが、雑な工事や無知な工事が、いかに危険な建物を生むかを知りました。

様々な基礎知識と専門的な情報に触れたことは、現在の設計業務の上でも色々と役に立っていると思います。例えば、コンクリートの圧縮破壊試験や、鉄骨の柱と梁の接合部の破壊試験で、コンクリートや鉄骨といった頑丈そうなものでも、設計を間違えると意外と簡単に破壊されるものだという実体験がありますので、実務でプランニングをする際にも、構造的に無理無駄が無いかということには、高い意識を持って取り組んでいるつもりです。

また、現在は木造住宅を主戦場としていますが、たまにある鉄骨造の物件でも、十分な対応をすることが出来ます。