業務案内Hino Architectural Design

大規模化についてConcept

ここ数十年、日本では大手ハウスメーカー主導のビジネスモデルが浸透しており、均質・良質な「商品」を安定 して供給できるというブランドイメージがあります。実際、極端な欠陥住宅になる可能性は低いです。これは、質 の悪い地元の工務店に当たってしまった場合を考えると、大きなメリットです。 大企業の安心感もあるので、「家を買う」のであれば、良い選択しかもしれません。

しかし、過剰な広告宣伝費、頻繁な建替えで積み重なるモデルハウス費、大規模な会社組織により積み重なる営 業人件費、施工を下請けに出すことなどにより、工事原価に対する利益を多く取らざるを得ません。 ブランドイメージ、大企業の安心感などがあるとはいえ、コストパフォーマンスが良いとは言えません。 また、実際の工事は下請けの会社が行うため、施工品質が良いとは限りません。ここは、イメージと違うところか と思います。

ほかにも、気になる点があります。それは家づくりの「商品」化と、効率化のための分業制です。 そこには多くの問題点もあるので、そのことを掘り下げたいと思います。

分業制なので、担当が次々と変わる

大手ハウスメーカーに限らず、企業規模が大きくなると、営業・設計・工務・アフターサービスの分業化が進み ます。 大手ハウスメーカーでの家づくりを決める時、施主様はおそらく担当営業者の人柄と「商品」を見ているはずです 。 しかし担当営業さんの仕事は、契約で終わります。その後は、設計→工務→アフターサービスと担当者が次々と変 わっていきます。

担当が次々と変わること自体、引継不足によるトラブルの可能性が高くなりますし、人間関係の構築も難しいか もしれません。 営業さんには言っていたのに・・・。営業からはそんな話は聞いていません。などといったことは頻繁に発生しま す。 アフター担当者は、家を建てた時の事を知りません・・・。

プロデューサー(本当の意味の設計者)がいない

大手ハウスメーカーの中で、営業担当者の発言力は高いです。仕事を取ってくるからです。 設計部も「こんな間取りでは構造が成り立たないから変更してくれ」などのクレームをいいますが、「仕事を取っ てきたんだから文句言うな」で終わり、こんなことは頻繁にあります。  本来の設計者は、家づくりの最初から最後まで一貫して担当しますし、ある意味家づくりに関する全ての権限と 責任を持って、お客様と向き合うものです。つまり総合プロデューサーのような立場で、映画の監督、オーケスト ラの指揮者のようなものです。

ですが、上記のように分業化が進むと、だれが設計者なのかも曖昧で、総合プロデューサー不在、日替わり座長 状態になってしまいます。 本来は、設計者がその役割を担うべきなのですが、商業化・商品化のもとに、様々な 権限と責任を奪われてしまっています。

「商品」でいいのか?

しかし家づくりは、20業種以上の業者さんの数十人の職人さんが携わり、数千万円の予算が組まれ、最低でも 半年はかかる、大プロジェクトです。プロデューサーは当然必要ではないでしょうか? そもそも、私は家を「商品」と思ったことはありませんし、家づくりという、高度なものづくりを「商品」という のも嫌いです。 こだわりの家づくりをする事業者には、共通する想いではないかと思います。

しかし、規格化された「商品」であれば、プロデューサーは要らないように思います。 また、大手ハウスメーカー主導のビジネスモデルを成立させるためには、家づくりの商品化が必要だと思います。

結局、住宅業界には、相反する二つの方法があるということだと思います。どちらを選ぶか、慎重に考えるべき だと思います。

大規模化は不要なのか?

同じ建築業界でも、高層ビル、国立競技場、東京スカイツリーなど大規模建築物の場合は、大企業でなければ出 来ないものですので、大手ゼネコンなどの存在意義は大きいと思いますし、そういった建築物の受注には大規模な 広告宣伝・モデルハウスは必要なく、販売管理費・広告宣伝費が無用に増えることもありませんので無駄もあまり ありません。
ですが、住宅は小規模建築物です。一人の設計者で総合的に設計することが可能ですし、臨機応変に対応するた めにもそうするべきで、そこに大きな組織は不要と考えます。 大手ハウスメーカー主導のビジネスモデルは、戦後~高度成長期の、住宅不足の時代には適したシステムだった のかもしれませんし、これからの時代でも、「家を買う」と考える人には合っていると思います。
しかし、「家を建てる」または「家をつくる」と考える人、そしてこれからの時代に本当に必要な住宅には、適 していないと思います。