温熱設計Hino Architectural Design

2-2.夏の温熱設計と中間期の温熱設計

夏の温熱設計

夏も、まずはパッシブデザイン。
その中でも、日射遮蔽が最重要

夏の内外気温差は、冬よりかなり小さいです。冬は5℃→22℃として17℃の差がありますが、夏は猛暑日を想定し35℃→27℃として、8℃と冬の半分程度の差しかありません。なので高断熱な家の場合、ですので屋根・外壁などから入ってくる熱量は冬の半分程しかありませんので冬よりも条件が緩いです。しかし、直射日光の侵入を許してしまうと状況は一変してしまいます。夏の場合は、日射取得することは負担にしかなりませんので、日射遮蔽がどれだけしっかりと出来るかが、非常に重要です。もちろん、日射遮蔽を全くせずとも、大容量のエアコンをたくさん設置することで室温を下げることはできます。しかし、高い電気代を払わなければいけないのはもちろん、背中に直射日光を受けながら、顔にエアコンの冷気を浴び続けるようないわゆる冷房病になりそうな状況になってしまいます。
夏の窓の日射遮蔽が、どれだけ大切かは、この図を見ればわかります。

出典:松尾設計室 代表取締役 パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也氏

上の図のように、軒・庇などで日射遮蔽するだけで、窓から進入する熱量を1/10以下にする必要ができます。
ですのでもし、パッシブハウスクラスの家で床面積120㎥、Q値=1、日射取得面は掃き出し窓5ヶ所のみで日射取得面以外の窓は、日射遮蔽が完璧だとすると、日射取得面の日射遮蔽が出来ているかどうかで、冷房に必要なエネルギーは大幅に変わります。

このように日射遮蔽が十分だと、3倍以上もの冷房エネルギーが必要になってしまいますので、日射遮蔽は非常に重要です。

夏に通風させても、デメリットしかありません

夜間の外気は、温度こそ25℃前後まで落ちますが、湿度が高いので、夜間といえど、通風すると多量の湿気を室内に取り込んでしまい、その状態からエアコンで除湿すると、温度が下がり過ぎてしまいます。
そうなると、今度は何らかの方法で暖房する必要がでてくるという、バカバカしい2度手間になります。
できれば、窓を開けることなく、冷房を連続運転するのが一番良い過ごし方です。

熱交換換気で、冷気を逃さず、水分を入れない

換気の際に、せっかく27℃前後まで冷やした空気を屋外に捨ててしまうのは、勿体ないし、エネルギーの無駄遣いです。 そこで、熱交換換気システムにより、排気から冷気を回収します。 高性能なものだと、90%程度の熱を回収できますので、冷房に必要なエネルギーを大幅に削減することができます。
また、日本の夏は、湿度が高いですので、除湿することが非常に大切です。そして、除湿は基本的にエアコンで行いますが、エアコンで除湿した場合、室温の温度が下がりすぎる傾向になります。ですので、湿度も回収できるタイプの熱交換換気システム(全熱交換型)が最適ですが、それでも一日あたり5ℓ以上除湿する必要があります。 また、3種換気など、湿度を回収できない換気システムの場合、除湿をする必要が ありますが、これだけ大量にエアコンで除湿すると室温が下がりすぎてしまうのでサ再熱除湿に頼らざるを得なくなるか、除湿を途中であきらめるかどちらかだと思いますので、全熱交換型換気システムが必要だと考えます。

まとめ

このように、蒸暑地である徳島県でも、健康で快適な室内環境を実現するため、やはり高い断熱性能が必要です。
その上で、日射遮蔽と除湿に細心の注意を払って温熱設計することが欠かせません。

中間期にも、様々な工夫があります

<5月、10月>

この時期は、少しだけ冷房の必要がある時期です。 ですが、夜間は外気温が比較的低くなり、湿度も高くないことが多いので、ナイトパージなどによる外気冷房が有効です。 ナイトパージとは、夜間の涼しい外気を室内に取り込むことで、日中の冷房の必要量を減らすことです。そのためには、頂側窓を設けることや、風向きに合った窓を 設けることが有効です。とくに大きな頂側窓を設けることで頂側窓のみを開けるだけでナイトパージする方法もあり、「一面解放外気冷房」と言います。

<梅雨>

梅雨は外気温はさほど高くないですが、湿度が非常に高いです。 当然除湿する必要がありますが、エアコンで除湿すると、室温も下がってしまいます。 再熱除湿機能付きのエアコンなら、ある程度この問題を解決できますが、エネルギー的には無駄があります。 ですが、パッシブデザイン的な工夫でエネルギーを無駄遣いしない除湿方法もあります。

<秋口>

9月頃は、夏よりも太陽高度が低くなっているので、軒・庇による日射遮蔽が機能しません。 ですが気温はまだ高いので、そのままでは簡単にオーバーヒートしてしまいますので、アウターシェードや外付ブ ラインドなどが必要となります。

2020.08.04
温熱設計